理事長・院長 石川修二
歯科医師 石川高行
東京医科歯科大学の同窓会誌に書いた、解明当時の回想文
『卒後、第三保存(鈴木賢策教授)の大学院に入学し、またまた、学生生活を送ることになり、「象牙質知覚過敏症本態の解明」というテーマを貰い、毎日、夜遅くまで頑張って研究していました。
いま想うに、自発的な勉強という意味では、生涯で一番ハッスルしていたのではないかと感じています。
研究した内容ですが、従来は、象牙質知覚過敏症は『露出象牙質全体が冷温水やブラッシングなどの刺激に対してのみ強く反応するが自発痛は出ない』という特異な症状を呈し、自発痛を伴う歯髄炎とは異なる疾患とされていました。様々な学説、例えば、象牙細管内に神経線維の末端が入ってきているのではないかとか、象牙繊維自体が刺激に対して過敏に感じているのではとか、諸説いろいろで、当時、病因が解明されてない疾患でした。なんとか、その知覚過敏を起こす原因を見つけようと試行錯誤し、研究した結果、象牙質露出面のごく一部の象牙細管内繊維が消失し、空洞になり、そこは浸出液に満たされていて、様々な刺激を極端に通しやすい象牙細管に変化した結果、知覚過敏を起こしていたことが解りました。露出象牙質全面ではなく、露出面のごく一部のみが、刺激に対して過敏に反応する点(知覚過敏点)であることを見つけたのです。刺激が瞬時に強く伝わるという事は、逆に刺激さえ取れれば、浸出液のみで開放状態に変化した細管から、すぐに痛みが消えるということです。
象牙質知覚過敏症の最大の特徴である『刺激すると非常に敏感に反応するが、刺激さえ取れれば、痛みは消え、しかも自発痛が出ない』という、摩訶不思議な現象が解明されたのです。
はじめ、鈴木教授は知覚過敏点の存在に、全く否定的でした。否定的だけでなく、『でたらめではないか』と怒ってもいました。
初秋の夕暮れ時に、旧歯学部大学病院の第二保存科診療室で、鈴木教授に『証拠をみせろ!』と言われ、重度の知覚過敏症の二名の患者さんにわざわざ来院して貰いました。
教授が探針で丁寧に歯面を探り、象牙質露出面を触っても無反応であった患者さんが知覚過敏点に先が触れた途端、飛び上がって痛がったのです。
ビックリした教授はおもむろに立ち上がり、『これは大変な事実だ。すぐに論文にしよう』と言いました。鈴木教授が疑ったように、論文を読んだ徳島大学歯内療法学の教授が実体顕微鏡などで、直ぐに追試を行いましたが、同様な事実が確認されました。新発見だと鈴木教授にすごく喜ばれた事が大学院の研究生活での良い思い出です。』
東京医科歯科大学同窓会誌『いま想うこと』より一部抜粋
著作論文掲載情報
インプラント関連
顎関節症関連
など…
学会発表は国内外の歯科・医科学会において、顎関節症・インプラント関連を中心に、50回以上となります。